あいの風

吉川 正裕
 高速道路より曲がりくねった山道を走るのが好きだ。
行ける所まで車で行きそこから登山靴に履き替えて歩き始める。そばには警察犬としての訓練を卒業したシェパード犬のエースがピタリと付き添う、行く手には残雪の山々に抱かれて露天風呂がポツン、ポツンと現れる。大自然のなかにコンコンと湧く温泉にどっぷりと浸かる。生きている喜びと明日への活力が湧いてくる。湯上がりに河原で冷やしたビールを一気に飲めば、これ以上の楽しみはない。

 あいの風が好きな温泉は、人知れず沸く無料の露天風呂です。良い温泉だとか他人に評価される為に地上に現れた温泉ではなくて、そこに温泉がある事に気が付いてくれたゲストにのみ、感動と癒しを与えてくれる温泉。そんな温泉に出会った時に、湯の方からあいの風になめずって離そうとしてはくれません。でも、そんな温泉も今では少なくなった。